理事長 中西洋一

2009年5月より、特定非営利特定活動法人(NPO)西日本がん研究機構(WJOG)の理事長に就任いたしました。

WJOGは、2000年に初代有吉寛先生の下に我が国初の「肺がんの診断・治療法の向上と予防」を目的としたNPOとして産声を上げ、我が国の肺がん医療の最適化に向けた活発な活動を開始しました。 2代目福岡正博先生の下で活動をさらに活性化し、2007年には消化器がんを含めて複数の癌種に対象を広げ名称をWJOGに変更し今日に至っています。

日本国民の死因の第1位はがんです。世界一の長寿国とはいえ、がんに苦しむ患者さんやご家族の比率は他国以上に多いという現状があります。すなわち、がん対策は21世紀日本における健康保健における最重要課題ということができると思います。これに対して、2007年にがん対策基本法が制定され、医療者、医学研究者、行政、社会を含め、国を挙げてがん対策に取り組むことが決定されました。そんな中、WJOGは科学的、倫理的で質の良い臨床試験を実施することを通じて、最良最適のがん治療法を提供することを第一の使命として活動しています。また、会員自身の教育研修や市民公開講座、出版物などを通して、「かからない」、「治る」、「共存しながらも辛くないそして価値ある日々を送れる」社会の実現を目指しています。

 WJOGは、歴代理事長のリーダーシップと会員の努力、そして何よりもがんの患者さんとご家族のご理解を得て、がん臨床試験を使命とするNPOでは我が国のみならずアジア最大の組織に成長しました。しかし、現状に安住することなく、透明で公正な臨床試験の実施、柔軟かつ強靱な組織の運営、社会に視点を置いた活動、会員間でのたゆまぬ研鑽を目指すことが必要です。社会と共に活動するWJOGの今後歩むべき道を、会員ならびに社会の皆様と共に切り拓いて行きたいと思っています。皆様のご指導とご支援をお願い申し上げます。

前理事長 福岡正博

わが国では年間32万人が悪性新生物(がん)で死亡し死亡原因の第1位となっています。この状況の中で、平成19年4月に“がん対策基本法”が施行され、国を挙げて“がん”に取り組むことが示されました。がん対策の中で重要な課題のひとつががん治療を推進することであります。優れたがん治療が生まれるためには、基礎研究と臨床研究の両者が共に発展しなければなりません。しかしながら、わが国では欧米に比べて臨床研究の遅れが指摘されてきました。欧米においては多くの臨床試験グループがあって、毎年新しいエビデンスが生まれ、治療の進歩につながっています。わが国においては、1990年代になってようやく臨床試験の重要性が議論されるようになりました。私どもは1900年代初期に肺癌の多施設共同臨床試験を開始しました。その頃は数10例規模の第・相試験が中心でした。しかし、臨床試験グループとしては、大規模試験によって新しい標準的治療を確立しなければ社会的貢献とはなりません。そこで、私どもは大規模臨床試験が可能なグループにするための基盤整備にとりかかりました。そして、2000年12月にNPO法人格を取得して特定非営利活動法人西日本胸部腫瘍臨床研究機構、英文名をWest Japan Thoracic Oncology Group(WJTOG)として新たな出発をいたしました。それからは、肺癌治療に関する無作為化比較試験(第III相試験)を次々と実施し、世界的にもその存在が認められるようになってまいりました。NPO法人化して以来、独自のデータセンターも設置し、参加施設も100を超え、症例集積も年間700例を超えるまでに成長してまいりました。これらの実績を上げられたのは、多方面からの多大なご支援をいただいた賜と感謝しています。そして、2007年5月には、これまでの胸部腫瘍だけでなく、消化器癌グループを加え、複数のがん種について臨床試験ができる体制をとり、名称も特定非営利活動法人西日本がん研究機構:West Japan Oncology Group(WJOG)と改めました。WJOGの設立理念は、がんに対する臨床試験を実施・支援すること、国内外の研究情報の収集、さらに臨床試験の必要性と重要性を広く社会一般に周知することであり、以って、社会全体の利益に寄与することであります。臨床試験は医学・医療の発展にとって極めて重要であります。その意味から、臨床試験グループの育成には国家レベルでの支援が必要であると強く感じています。WJOGが欧米の臨床試験グループと同じ程度の質の高い臨床試験を実施して新しいエビデンスを創生し、がん治療の向上に寄与するよう頑張ってまいります。ご指導とご支援をお願い申し上げます。
平成20年1月

会長 福岡正博

WJTOG会長は平成16年5月のWJTOG総会において、初代会長の有吉 寛が勇退し、新会長として近畿大学腫瘍内科教授(現 近畿大学堺病院長) 福岡正博が就任いたしました。WJTOGからWJOGへの名称変更に伴い、平成19年に、福岡正博が引き続き理事長を務めることになりました。

WJTOG(WJOGの以前の組織)初代会長  有吉 寛

いよいよ念願が叶い、肺癌を中心とする胸部腫瘍の臨床研究組織WJTOGが発足致しましたが、その母体は1991年に結成されました西日本肺癌化学療法研究会であります。この組織は西日本各地の病院に勤務し、肺癌の化学療法に関心を抱く内科医師の集まりでした。

 この研究会に参加した医師達の一部は厚生省から国立がんセンターを経由して補助される研究費に依存するグループ(Japan Clinical Oncology Group,通称JCOG)に属しており、研究会開催のテーマによってはその補助を受けていましたので、一時は厚生省班会議の小班との位置づけでありました。しかし、純粋に肺癌の化学療法治療成績を向上させることに期待を抱いている内科医は束縛のない自由な発想に基づく臨床武験への願望と、その発想のpriorityを尊重する組織の確立を目指しておりましたので、運営費用の殆どを自らが勤務する病院の施設会費として徴収されたお金を充当し、ある時は自腹を切るという、まさに手弁当の活動を開始したわけです。そして、過去約10年の間にJCOGスポンサーで非小細胞肺癌患者III期症例320例による化学療法と放射棟療法のタイミングの無作為化比較試験を僅か2年3ヶ月で完遂し、さらに塩酸イリノテカンの市販後調査を390例の3群無作為化比較試験で成功裏に終了しました。こうした実績から外国からも高い評価を受けており、JCOGが東京にある国立がんセンターに属する組織であることを知る米国の友人達は、日本の肺癌化学療法の成績を述べると、WestかEastかと聞いて来るまでになりました。

 しかし、私たちが夢みていたのは、米国のECOGやSWOGなどに比肩する腫瘍研究グループの確立でした。それらもNPO組織であり、実績を示すことで経済基盤が確立し、それによりさらに充実した研究成果を生み出しているという良好な循環が認められております。

 私たちは一昨年からNPOとしてのWJTOGを組織する検討を開始し、一部会員の献身的な努力で平成12年12月12日に大阪府よりNPOとして認知されたわけです。WJTOGはその名称通り研究対象が未だ胸部腫瘍に限定された組織ですが、将来は前述した日本のECOGやSWOGとして成長することを念願しております。当面、WJTOGは肺癌治療の臨床試験を中心とした臨床研究の充実、臨床腫瘍医の育成、肺癌患者さんへの教育広報などを目指して活発なボランティア活動を展開するつもりです。

 近年はエビデンスに基づく医学(EBM)か尊重されますが、それは全て良質な臨床試験に基づいております。したがって、多くの肺癌患者さんにご協力頂く臨床試験は医学で最も大切な臨床研究でなければなりません。WJTOGは将来の肺癌撲滅を目指して患者さんのために活動することを誓います。